産廃情報ネット
2021.08.01 社員のつぶやき

廃棄物行政におけるSDGsのすすめ

行政処分におけるSDGsのすすめ

SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)が注目されて久しい昨今ですが、SDGs的な事業を進める上でネックとなるのが「規制」です。

 規制があると、どうしても合理化や簡素化が難しく、「地球の将来のために」と頭では計画を練っても規制の壁に阻まれてしまうことが多々あります。その規制の最たるものとして「行政の規制があるもの」が挙げられます。行政の規制があるものは様々な分野に及びますが、今回は弊社の業態である「廃棄物(特に事業系一般廃棄物)」に注目したいと思います。

1店舗に何台行くの?

一般廃棄物車両分別君 

23区内にある一般的なスーパーマーケットから排出される廃棄物を大別すると、

①事業系一般廃棄物(可燃ごみ)
②事業系一般廃棄物(弁当ガラ等)
③産業廃棄物(廃プラスチック類、発泡スチロール、缶・ビン・ペットボトル等)
④段ボール
⑤食品リサイクル

 ①から⑤は、それぞれ搬入先(処分先)が異なるため、最大5台の回収車両が行くことになります。例外として最近流行り(?)のWパッカー車(左右に独立した荷箱を搭載していて、それぞれに異なる廃棄物を積める)を使用したとしても、可燃ごみと弁当ガラ等といった2種類しか積めませんので、やはり4台は必要になります。(一般廃棄物系のWパッカー車の場合、a可燃ごみ+弁当ガラ等、b可燃ごみ+食品リサイクル、c弁当ガラ等+食品リサイクル以外の組合せは禁止されています。例)可燃ごみ+産業廃棄物→「×」。)

 仮に5台が4台になれば、それはそれでCO2の排出削減や軽油の使用量の削減にはなりますが、可燃ごみと弁当ガラ等は搬入先が異なるため、結局はあちこちに降ろしに行かなければなりません。そもそも、Wパッカー車の使用は我々業者側の「努力の一環」でやっていることであり、行政が規制を緩和した訳ではありません。(主に運転手不足の解消が目的)

 1店舗に行く回収車両を少なくするには、A搬入先(処分先)が複数種類の受入れが可能なこと、B事業系一般廃棄物と産業廃棄物の詰合せが可能になることが必要ではないでしょうか。

弁当ガラ等は清掃工場に

 皆さんのご家庭のごみを思い起こしてみて下さい。可燃ごみと言われているものには、生ごみ、紙ごみ、木くず、ビニールが混在していることでしょう。

 ご家庭の場合、これらは全て一般廃棄物として清掃工場に搬入されます。

 事業系の場合、ビニールは事業系一般廃棄物である弁当ガラ等と産業廃棄物の廃プラスチック類に区別されます。

  • 可燃ごみは清掃工場
  • 弁当ガラ等は中央防波堤不燃ごみ処理センター
  • 廃プラスチック類は産業廃棄物中間処分場

それぞれ運搬する必要があります。

 現在の清掃工場ではダイオキシン対策が施されているので、弁当ガラ等や廃プラスチック類を焼却しても何の問題も無いので、ご家庭と同じ分別基準で可燃ごみを持って行けるのです。

 この「弁当ガラ等を清掃工場で燃やす」ことについては、かなり以前から議論の対象となっていますが未だに決着を見ず、門前払い扱いされているのが現状です。

 可燃ごみと弁当ガラ等を一緒に清掃工場で燃やせると、回収車両が1台減らせると同時に清掃工場で全てを降ろすことができるので中央防波堤不燃ごみ処理センターまで車両を走らせる必要がなくなり、Co2の削減にも有効となるのです。

 もし、ここでWパッカー車を使用したとすると、片方の荷箱に「可燃ごみと弁当ガラ等」、もう片方の荷箱に「段ボール」を積めば、今まで3台の車両を走らせる必要があったものを1台で済ませることができ、かなりのCo2削減が期待できると思います。(それぞれの積載量にもよりますが)

一般廃棄物車両に産業廃棄物を積む

 一般廃棄物車両分別君

 現在の廃掃法では、一般廃棄物と産業廃棄物とを同じ車両に積むことは禁止されており(段ボールの様なリサイクル品であれば可能)、一般廃棄物の許可車両で発泡スチロール等の産業廃棄物を回収することはできません。

 廃棄物回収業者の中には、一般廃棄物と産業廃棄物を違法に「詰め合わせ」しているケースも散見されますが、これを合法化できるとかなりのメリットが生まれてくると思います。

 例えば、Wパッカー車同様に最近良く見かける「籠(かご)付きパッカー車」(キャビンと荷箱の間に金属製の籠が設置してある)の籠に産業廃棄物も積んで良いとなれば、小型店舗で産業廃棄物の発生量が少ない場合などは、Wパッカー車を使用すると可燃ごみ(前述の可燃ごみと弁当ガラ等が一緒の場合)と産業廃棄物と段ボールが1台で完結してしまうことも考えられます。

 もちろん、箱車や平ボディー車と言った「ごみの排出装置」を有さない車両が清掃工場で可燃ごみを降ろすことになると時間が掛かり、渋滞やトラブルの原因(運搬途中の汚水漏れ、飛散の防止も考慮)となりますのでパッカー車限定にすることでも良いでしょう。

 我々、事業系一般廃棄物回収業者の殆どが産業廃棄物の許可を有しており、産業廃棄物の扱いにも精通していますので、運転手にきちんと指導を行えば無用なトラブルを起こす可能性は低くなり、一般廃棄物・産業廃棄物の「許可」と言う縄張りを撤廃することだけで、そのメリットはかなりのものになると思われます。

清掃工場もSDGs対応に

 清掃工場

 清掃工場では、ごみを燃やす際に発生する「熱」を利用し「発電」(主に清掃工場で使用する電力に使用)と「熱利用」(隣接する植物園や温水プールの供給)を行っています。

 しかし、発電機の出力は小さく、自分の工場の使用量を賄う程度に過ぎません。また、熱利用もかなり限定的なものになっていますので、前述の「弁当ガラ等」を一緒に燃やすようになれば「燃料」が増えると同じ事になりますから、発電機を大型化して他所にも売電、熱利用を広域化して近隣住民への給湯等を行う様にするのはいかがでしょうか?

 Co2の発生は極力減らさなければなりませんが、食品等が付着した廃棄物は衛生面からも焼却せざるを得ません。清掃工場=発電所・熱源と考え、そこで発生する電力や熱源を最大限に利用することで、他の発電所や給湯等に使用するエネルギーを削減できるのではないでしょうか。

 23区内にある21箇所(建て替え中を含む)の清掃工場がこうした取り組みを行えば、かなりのエネルギー源となりますので、そのエネルギーを無駄にしない様にしたいものです。

食品リサイクル方式の見直し

 食品

 現在、食品リサイクルで認められている主な方式は、以下の3つになります。

  1. 堆肥化
  2. 飼料化
  3. メタンガス化

 それぞれにメリット、デメリットがありますが、平成31年に農林水産省が実施した各食品リサイクル方式の「ライフサイクルアセスメント」LCALife Cycle Assessment)とは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法です。LCAについては、ISO(国際標準化機構)による環境マネジメントの国際規格の中で、ISO規格が作成されており、こうした流れを受けて、わが国の企業でもCSR報告書などでLCAが取り入れられています。】では、メタンガス化が最もCo2の発生が少なく効率が優れていると発表されました。

 これは何を意味するかというと、同じ食品残渣物をリサイクルするのであれば、メタンガス化が一番環境に優しいということなのです。

 特に注目すべき点は、メタンガス化は「エネルギー源」であるということであり、本来捨ててしまう(リサイクルをしなければ全て焼却)物をエネルギーに変換できるのは、堆肥でも飼料でもなくメタンガス化だけなのです。

 今、食品リサイクルは公共機関では行っておらず、全てが民間企業に依存しています。前述の清掃工場の有効利用のひとつに、このメタンガス化施設を組み込んでみてはいかがでしょうか?

 メタンガス化は、食品が腐敗する際に発生するメタンガスを回収(堆肥はこのメタンガス=地球温暖化ガスが大気中に放出される)し、それを利用するので直接地球温暖化ガスが放出されず、飼料の様に加工するためのエネルギーを必要としないため、環境負荷が低いことが報告されていますので、この方式を採用することは有効なエネルギー利用となるはずです。

 メタンガス化は他の方式と比べて技術的な難しさはある様ですが、地球環境のためには是非とも取り入れて頂きたいものです。

都市鉱山ならぬ都市発電

 空に浮かぶCO2

 一昔前、パソコンや携帯電話に使用されている金属類を称して「都市鉱山」等と言われていましたが、大都市圏から排出される廃棄物については処分先が無いとか量が多いとかのマイナス的な発想ばかりで、これを都市鉱山の様にプラスイメージで語られたことはありません。

 廃棄物は、出さないに越したことはありません。しかし、出てしまった物を限りなく有効利用することで「エネルギー」が得られ、その分、火力発電等に使用している石油や天然ガス等の使用を抑えることができれば良いのではないでしょうか。

 前述の通り、可燃ごみと弁当ガラ等を一緒に燃やすと言う発想でいけば、回収車両が減りCo2の発生が抑えられるだけでなく、ビニール・プラスチックがメインの弁当ガラ等を燃やすことによって「高火力」が得られて発電効率が上がります。

 こうなれば、清掃工場に搬入される可燃ごみ類は完全に「代替燃料」として機能してくれ、天然資源を消費する量も減らせますし、こう言った天然資源の殆どを輸入に頼っている我が国への輸送に掛かるCo2やコストの削減にも繋がります。

 当然、清掃工場で燃やすだけではなく食品リサイクルでメタンガス化が主力となれば、こちらもエネルギー源となりますので、かなり有効性が増すのではないでしょうか。

 例えば、原油は遠く中東から運ばれて来ますが、廃棄物は都市から運ばれて来ます。23区内には現在21箇所の清掃工場(うち2箇所は建て替え中)があるので、清掃工場を有していない区であっても「隣の区」に運べばエネルギーが得られる計算になります。(例:荒川区は清掃工場を有していませんが、隣の足立区や北区には清掃工場があります。10kmもあれば到着できます。出光タンカー㈱のホームページによるとペルシャ湾からの原油タンカーの輸送距離は約12,000kmなので1/1,20020=480時間掛かるが清掃工場であれば1時間もあれば到着するので1/480。)

 これこそ、まさに「地産地消」。輸送に掛かるエネルギーの消費とCo2の発生抑制もできて一石二鳥以上のメリットが得られるのです。

民間企業の柔軟な発想を導入する

柔軟な発想 

 お役所は「旧套墨守」が仕事です。SDGsはこれからの地球に必要な発想です。この全く反対の性質のものを、その許可権者であるお役所がリードして有効なものができるでしょうか?

 答えは「否」です。

 民間企業は常に「合理性」や「効率性」を追求することで初めて存続ができるのに対し、お役所は「失敗しない様に今までと同じことをする」ことで存続しているのです。

 これでは、SDGsと言う新しい風を掴み、利用することはできません。今こそ、民間企業から意見を募り、それを実践することが求められている時なのです。

 清掃工場で弁当ガラ等を燃やす、一般廃棄物と産業廃棄物を同じ車両で回収するなどといった発想は、彼らには全く浮かばない発想です。

 百歩譲って、そういう発想が出てきたとしたも「トラブルがあったら誰が責任を取るのか」とか「廃棄物業者は信用できない」とかで立ち消えとなるのは明白です。

 SDGsを推進する上で必要なのは、誰が責任を取るだとか信用できる、できないではなく、未来の地球のために「できる限り負担を減らす」ことなので、我々の様な廃棄物業者と23区、都、国の担当者が腹を割って協議をしなければなりません。

 「できない。」と言うのは簡単です。しかし、それではSDGsは達成できません。「できない。」ではなく、「やらなければならない。」と言う発想を共有し、利害の到達目標を未来の地球に据えなければならない時がやって来ているのです。

 当然ですが、この様な協議になれば民間企業の発想をお役所が反対する構図になりますので、それを良い意味で押し切れる政治家の登場も必要不可欠なポイントになります。

 とは言え、今の政治家達を見渡す限りかなり難しいと思うのは私だけでしょうか?

 「もりかけ問題」の様に有耶無耶にする政治家、「コロナ騒動」で国民の命を大切にしない政治家ばかりのこの日本で、本当に行政がSDGsを推進・達成できるかは甚だ疑問ではありますが、私達の孫子のためにも私はブログで訴え続けて参ります。

 

 最後になりましたが、東京オリンピック2020が開催されました。開催に関しては様々なご意見があると思いますので、個人的な意見は控えさせて頂きますが、このブログをご覧の皆様にお願いが御座います。

 各地の交通規制ににより、皆様には多大なご迷惑をお掛け致しまして誠に申し訳御座いませんが、我々も精一杯努力をして廃棄物の回収に努めておりますので回収時間の遅れ・前倒し等にはご理解とご協力をお願い致します。

利根川 靖

監修

利根川 靖

株式会社利根川産業の二代目経営者。業界歴20年で東京都廃棄物の組合理事も兼任。
廃棄物業界を盛り上げようと地方の業者と連携。得意分野はITツールにて生産性を高めること。
これからの若い人材が業界で働きたくなる魅力づくりに奮闘中。

Web問い合わせ
Web問い合わせ
ページトップ