本当はヤバい「食品リサイクル」と「SDGs」との関係性とは?
既に施行・実施されて久しい「食品リサイクル法」ですが、実は「SDGs」との組み合わせにとって、その「相性がイマイチ」だということを皆さんはご存知でしょうか。法律だからしょうがないとせっせとリサイクルをしていても、実は御社のSDGs的には「NG」だったりしたら・・・?
弊社は東京23区を中心とした廃棄物収集運搬及び処分リサイクル会社であり、年間数千トンもの廃棄物を適正に運搬・処分している会です。
今回は、食品リサイクル法の基礎を振り返りながら、SDGsとの関係性に焦点を当てていきたいと思います。
食品リサイクル法とは
「食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)」とは、食品関連事業者(製造・流通・外食)に、売れ残った食品や食べ残し、食品の製造過程で発生する食品廃棄物を減量化およびリサイクルを義務付けた法律です。2001年より施行され、2007年に一部改正されました。
食品リサイクル法で対象となる食料品
- 食品の売れ残り
- 食べ残し
- 製造・加工・調理の過程で生じたくず
(固形物だけでなく、廃食用油や飲料等の液状物も含まれます。)
食品リサイクル法で対象
- 食品製造業・加工業(食品メーカー等)
- 食品卸売業・小売業(各種食品卸、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、百貨店、八百屋、魚屋、肉屋等の小売業等)
- 飲食業やその他食事の提供を行う事業者(レストラン、ホテル、旅館、結婚式場等)
食品リサイクルを実施しなければならない「食品関連事業者」の判断基準となる条件としては、「食品廃棄物等の前年度の発生量が100トン以上」の事業者となっており、該当する企業は、毎年度、国への食品廃棄物等の発生量や食品循環資源の再生利用等=食品リサイクルの状況を報告することが義務付けられています。
※「100トン以上」とは、1店舗の排出量ではなく、同一企業全体の数量です。
新たな目標設定
令和元年7月12日に公表されました新たな基本方針では、2024年度(令和6年度)までに
食品製造業は95%、食品卸売業は75%、食品小売業は60%、飲食業(外食産業)は50%を達成する様に目標が設定されています。
(2019年までとの比較:食品卸売業70%→75%、食品小売業55%→60%)
「再生利用等実施率」の計算式は以下の通りです。
再生利用等実施率 = その年度の(発生抑制量+再生利用量+熱回収量×0.95※+減量量)÷その年度の(発生抑制量+発生量)
※熱回収については、省令に定める「熱回収の基準」を満たす場合のみ算入可能です。また、食品廃棄物の残渣(灰分に相当)率が5%程度であり、この部分は利用できないことを考慮して0.95を乗じています。
「基準実施率」の計算
基準実施率=前年度の基準実施率+前年度の基準実施率に応じたポイント
平成20年度からスタート。平成19年度の基準実施率は、平成19年度の再生利用等実施率とします。但し、平成19年度の再生利用等実施率が20%未満の場合は、20%として基準実施率を計算します。
令和2年度(令和元年度推計) 食品廃棄物等の発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率等の資料(農水省HPより)
食品循環資源の再生利用等とは
食品リサイクルとして認められている手法のことで、下記の3種類があります。
【食品循環資源】
食品廃棄物であって、飼料・肥料等の原材料となるなどに有用なもの。
【再生利用】
食品循環資源を飼料・肥料・炭化の過程を経て製造される燃料及び還元剤・油脂及び油脂製品・エタノール・メタンガスとして利用し、又は利用する者に譲渡すること。
【再生利用等】
発生抑制。再生利用、熱回収、減量(乾燥・脱水・発酵・炭化)。
主な再生利用事業者の種類
- 肥料化(104)
- 飼料化(54)
- 油脂、油脂製品化(24)
- メタン化(11)
- 炭化(2)
「( )」内の数字は、令和元年度10月現在の登録再生利用事業者の数
飼料化
脱水や乾燥によって製造する乾燥方式、乳酸発酵させて製造し牛用飼料となるサイレージ方式、液状に加工し製造し豚用飼料となるリキッド方式があります。飼料化は、飼料自給率の向上にも寄与するため、優先的に行うことが推奨されています。食品廃棄物等多量発生事業者における再生利用の実施量内訳では、飼料化が約9,000tと最も多いです。
肥料化
肥料化は、他のリサイクル手法と比べて、初期投資が少なく技術的なハードルが低いことから比較的始めやすい再生利用方法です。
メタン化
メタン化とは、食品廃棄物などの動植物に由来する有機物をメタン発酵し、メタンガス(バイオガス)を生成することです。生成されたメタンガスは、電気や熱などのエネルギー源として利用されます。食品卸売業や外食産業が扱う食品残さは異物の分別が困難なものもありますが、メタン化は比較的分別が粗くても対応が可能な場合もあります。
エタノール・炭化
食リ法で認められている再生利用方法ですが、日本での再生利用実施量は小量です。
熱回収
食リ法では、まず飼料化や肥料化など他の再生利用方法を検討すべきとし、これらが困難な場合、熱回収を行うという位置づけになっています。また食リ法および、熱回収省令で定められた一定の要件を満たした事業者のみが、再生利用方法として熱回収を行ったと認められます。詳細を知りたい方は、環境省ホームページ:食品リサイクル関連 熱回収施設をご参照ください。
「SDGs」との関係性
SDGs(環境関係)の取り組みの中核を成している一つに「地球温暖化ガス(GHG)の発生抑制」があります。
皆さんの会社も白熱球や蛍光灯をLEDにしたり、営業車をハイブリッド車にしたりといろいろな取り組みを行いCo2(地球温暖化ガス=GHGの一種)の削減を目指していると思います。食品リサイクルとSDGsの関係性を考えたことはありますか。
食品リサイクルの手段として、その8割を占める肥料化はどういう手法で製造されているかを考えてみましょう。
一般的な方法は、食品残渣物に藁(わら)等を混ぜ、時間をかけながら発酵させていきますが、この時に膨大な量のメタンガス系のGHGが発生しているのをご存知でしょうか。一昔前の話しですが「牛のゲップ」がGHGを大量に発生させていることが話題になりましたが、基本的にはそれと同じ理屈なのです。
ここに、農水省が行った「食品リサイクルについて」という資料があります。かなり長い上に難解なので要約すると、現在食品リサイクルの手法として認められている主な方法の中で、GHGの観点からは「メタンガス化」が最も優れている(GHGの発生が少ない)となっているのです。
もちろん、他の方法が悪いというつもりは毛頭ありません。いずれも食品リサイクルとして国に認められている方法です。現在も食品リサイクルの優先順位としては下記の通りです。
- 肥料化
- 飼料化
- メタンガス化
処理費用、近隣施設の有無、企業の方針等々の様々な理由からメタンガス化ができない、するつもりはないということも理解はしています。
ただ、農水省に聞いたところ来年度(2022年4月以降)に、環境省・経産省と連携して、食品リサイクルの方法によるGHGの発生の対比を発表し、食品リサイクルとその後のGHG発生量をリンクさせて企業の地球温暖化対策の一助になる様にしたいと言っていました。
そうなると、ただ単に食品リサイクルをすれば良いとは「企業的に放置できない」となるかも知れません。様々な搬入条件がクリアできるのであればメタンガス化施設は御社のGHG削減と食品リサイクルが同時に達成できる可能性があることを頭の片隅に置いて頂ければ幸いです。
メタンガス化施設は数が少ないので搬入枠は多くはありません。GHG問題が公になる前に少しづつでも良いのでシフトすることをお勧め致します。
まとめ
監修
利根川 靖
株式会社利根川産業の二代目経営者。業界歴20年で東京都廃棄物の組合理事も兼任。
廃棄物業界を盛り上げようと地方の業者と連携。得意分野はITツールにて生産性を高めること。
これからの若い人材が業界で働きたくなる魅力づくりに奮闘中。