ペットボトルのリサイクル方法2種類を紹介|リサイクルの必要性や環境への影響も解説します
・ペットボトルってリサイクルすると何になるのかな?
・ペットボトルって洗って、ラベルとキャップを外さないとだめなの?
・SDGsの一環で環境に寄与する行動をしたいんだけどな・・・。
私たちにとってペットボトルはとても身近な存在です。毎日1本はコンビニでペットボトル入りの水を購入する人も多いのではないでしょうか。
しかし、ペットボトルに悪い印象を抱いている人もいるのが事実です。
その理由は、海に浮かんでいたり道端にポイ捨てされているペットボトルを頻繁に見るからでしょう。
弊社は東京23区を中心とした廃棄物収集運搬及び処分リサイクル会社であり、年間数千トンもの廃棄物を適正に運搬・処分している会社です。
ペットボトルは正しくリサイクルすれば非常に環境に良い容器です。
この記事を読むことでペットボトルの基本的な情報から正しいリサイクルの仕方、リサイクルの必要性などを知ることができます。
次の世代に向けて、環境と共存し自身も環境に貢献している活動をしていかなくてはいけませんね。
この記事には、下記の情報が書かれています。
ペットボトルとは?
ペットボトルの「PET」とは「ポリエチレンテレフタレート」と呼ばれ、石油から作られる樹脂の種類で、英語表記では「PORY ETHYLENE TEREPHTHALATE」となり、この頭文字を取って「PET」と言われています。
PETは、通常「ポリエステル」とも呼ばれていますので、皆様が着ているワイシャツやブラウスの繊維や食品包装フィルムと同じ素材ということになります。
つまり、PET樹脂を溶かして糸にしたものが繊維、薄く延ばしたものがフィルム、膨らませたものがペットボトルなのです。
ペットボトル基本構造
ペットボトルの基本構造は下記の通りです。
- 石油依存度が低い樹脂
- 水に沈む
- マテリアルリサイクル向き
- キャップ・ラベルは別素材
ペットボトルは原材料、特徴ともに非常に優れた物質です。
ペットボトルの特徴をそれぞれ解説するので、どれだけ優れている物質なのかを確認してください。
①石油依存度が低い樹脂
PET樹脂は、主に炭素、酸素、水素で構成されており、約1/3が空気を原料とする酸素で占められているため、他のプラスチックと比較して石油依存度が低い樹脂です。
②水に沈む
他のプラスチックに比べ、炭素より比重の重い酸素が多く含まれているため、密度が水より重く沈みます。
③マテリアルリサイクル向き
PET樹脂は、酸素を多く含むので焼却時の発熱量が紙と同水準と低く、焼却炉を傷める心配がありませんので、焼却による熱エネルギー回収よりもマテリアルリサイクルに向いています。
マテリアルリサイクルとは:マテリアルリサイクル
④キャップ・ラベルは別素材
キャップと本体とは固着を防ぐため別素材のプラスチックが使用されますが、リサイクルをしやすくするため、水に沈む本体のPET樹脂(密度1.38g/㎤)に対して、キャップはポリプロピレンやポリエチレン(密度0.90~0.96g/㎤)と言った水に浮く素材にし、水を使用した比重分離が容易にできるよう、「自主設計ガイドライン」で定めています。
ペットボトルの作り方
①プリフォーム作成
PET樹脂を溶かし、圧力をかけながら金型に流し込み、「プリフォーム」と呼ばれる試験管の形をしたペットボトルの原型を作ります。
②加熱処理
この「プリフォーム」を約100℃まで加熱します。
③成型作業
加熱した「プリフォーム」をボトル成型用の金型(左右合わせタイプ)の中に入れます。
④空気充填
「プリフォーム」の中に高圧の空気を入れて膨らませます。
⑤冷却作業
冷却が終わったら、ボトル成型用の金型を開いてできあがりです。
ペットボトルの用途と種類
ペットボトルの種類は以下の4つがあります。
- A:炭酸飲料用ペットボトル
- B:耐熱用ペットボトル
- C:ホットドリンク対応ペットボトル
- D:一般的なペットボトル
ペットボトルは種類ごとに最適な用途が異なります。
自動販売機で売っている飲料も、それぞれに適したペットボトルが使用されています。
ペットボトルの種類と用途をそれぞれ解説します。
A:炭酸飲料用ペットボトル
炭酸飲料から発生するガス圧によるボトルの変形を防止するようにデザインされています。見分けるポイントは、ボトルの底の形が「ペタロイド(花弁)型」をしています。
B:耐熱用ペットボトル
お茶やコーヒー等の熱い液体を充填する際、ボトルネック(本体の口の部分)の変形を防止するようにデザインされています。見分けるポイントは、ボトルネック(本体の口の部分)が白くなっています。
C:ホットドリンク対応ペットボトル
ホット飲料の味や香りを損なわないようにボトルの内側に特殊な耐熱処理(結晶化加熱処理)等の工夫をしています。このタイプも耐熱用なので、ボトルネックが白くなっています。
D:一般的なペットボトル
上記のA、B、Cを除く非炭酸飲料、常温充填の用途に適しています。
ペットボトルの特徴
ペットボトルの特徴は以下の7つです。
- リサイクルが容易で環境に優しい素材
- 同じ容量のガラスビンと比較して約1/7~1/10の重さで済むため、軽い
- 加工しやすいのでサイズや形も豊富
- 強くて丈夫なので、落としても割れにくい
- 透明で美しく、中身が一目で分かりやすい
- 何度でもキャップをすることができる
- 食品衛生法に基づく規格に適合して衛生的
ペットボトルの安全性
(1)食品に接するペットボトルの安全性
食品の包装容器に使用されるプラスチック製品は、国で定めた規格と各業界団体で定めた規格に適合していなければなりません。
国で定めた規格とは、1982年に告示された食品衛生法の厚生省告示20号のことで、食品に接触する包装容器に使用されるプラスチック製品の規格です。
一方の業界団体で定めた規格とは、1973年に設立された樹脂メーカー、成形加工メーカー、添加剤メーカー、食品メーカー等の業界団体で作る「ポリオレフィン等衛生協議会」による自主規格のことで、アメリカ連邦食品医薬品局(FDA)規則やEU規則の規格に準拠している規格です。
当然のことながら、ペットボトルはこれらの規格に適合しており、衛生試験確認証明書がなければ使用できないことになっています。
(2)焼却、有害物質に対する安全性
ごみ焼却施設においては、プラスチックの焼却時に発生する高温や塩素系の材料が焼却時に発生する塩素ガス・ダイオキシン類が焼却炉を傷めたり、環境問題になっていたりしています。
PET樹脂は燃焼カロリーが5,500kcal/kgと低く、燃焼カロリーが高いとされるポリオレフィン類(ポリエチレンやポリプロピレン)の約半分であり、PETを構成する元素は炭素(C)、酸素(H)、水素(H)だけでできているため、焼却しても水(H2O)と二酸化炭素(CO2)しか発生しないのでダイオキシン類の発生原因といわれる塩素(Cl)は含まれていません。
ペットボトルリサイクルの必要性
ペットボトルのリサイクルが必要だと言われている理由は、資源問題と地球温暖化問題に関わるからです。
ペットボトルは石油から作られる「ポリエチレンテレフタレート」から作られています。
地球上に存在する石油は限られており、世界中で今のペースで石油が使われると、50年後には地球上から石油がなくなると言われています。
そのため、限りある資源を有効に使うためにリサイクルは欠かせません。
また、ペットボトルを焼却すると二酸化炭素を含む温室効果ガスが排出されてしまいます。温室効果ガスとは、地球温暖化の原因と言われている気体のことで、近年では世界中で温室効果ガスの削減が重要視されています。
ペットボトルのリサイクルをすることで、限りある資源や地球の環境を守ることに繋がるのです。
ペットボトルのリサイクル方法
ペットボトルのリサイクル方法は以下のような2つの方法があります。
- 繊維、フィルム等へのリサイクル
- ボトルtoボトルリサイクル
さらに、ボトルtoボトルリサイクルには「ケミカルリサイクル」と「メカニカルリサイクル」の2種類の方法があります。
リサイクル方法によってコストやリサイクル先、環境への負荷も変わるためそれぞれ詳しく解説します。
①繊維、フィルム等へのリサイクル
回収されたペットボトルから、キャップとラベルを除去し、洗浄・破砕してフレーク状にした後、熱加工により粒子状化(ペレット化)します。
この時点で「ポリエステル顆粒」となりますので、用途に合わせて溶かし、繊維やフィルムに加工されて再商品化されます。
②ボトルtoボトルリサイクル>
一度使用したペットボトルを再度使用するには衛生面のハードルが高かったのですが、日本国内では2つのリサイクル方法が内閣府の食品安全委員会で承認されています。
Aケミカルリサイクル(化学的再生法)
洗浄・破砕後に「解重合」(物体は分子が「重合」したものであり、これを分子レベルまでバラバラにすること)し、再度「重合」させることによってバージンと同等のPET樹脂に再生させる方法。
解重合にはエチレングリコール(EG)を加え、樹脂製造時の中間原料であるビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)まで戻し、これを精製してPET樹脂に重合します。
ケミカルリサイクルの特徴として、解重合と再重合の間に異物や異種材料が取り除かれるためにバージン樹脂と同等のPET樹脂に再生できます。
Bメカニカルリサイクル(物理的再生法)
洗浄・破砕後に高温加熱し、PET樹脂に付着・吸着した汚染物質を除去しながら分子量を上げ、ペレット化を行います。この時、細かい目のスクリーンで濾過して固形の異物を取り除きます。
ケミカルリサイクルに比べて大掛かりな分解(解重合)・重合に必要な設備が不要なため、製造コストや環境負荷が少ないと言われています。
日本国内では、このメカニカルリサイクルを行っているところは現時点ではありませんが欧米では、飲料や食品用に再生する装置や工程をアメリカFDA(食品医薬品局)による安全衛生性の承認の下で実用化されており、今後も新しい方法が開発される可能性が高い方法です。
ペットボトルのリサイクル率
日本国内のペットボトルリサイクル率は86.0%(2021年度)です。
日本のペットボトルのリサイクル率は世界トップで、その理由は回収率が94.0%(2021年度)と、かなり高いからです。
日本ではじめてペットボトルが採用されたのは1982年です。もともと飲料はガラス瓶に入っていたものの、割れやすく重いガラス瓶よりも軽量で落としても割れないペットボトルの方が飲料を運ぶのに適していると判断され、ペットボトルが使われるようになりました。
その後、ペットボトルは世界的に急速に普及し、現在では日本国内だけで234億本(2021年度)ものペットボトルが出荷されました。
日本国民一人当たり195本ほどのペットボトルを1年で購入しており、平均すると2日に1本ほど購入している計算になります。
ペットボトルの出荷本数は年々増加傾向にあり、今後もより増えていくと考えられます。
一方、世界的にはペットボトルのリサイクルはまだまだ進んでいないのが現状です。
例えば、米国ではペットボトルのリサイクル率は18.0%(2020年度)、欧州では42.7%(2021年度)に留まっています。
弊社のペットボトルリサイクル方法
弊社では、ペットボトルのラベルとキャップを最新の設備によって分離し、完全フレーク化を行い、その100%を国内の化学繊維メーカーに販売しています。
弊社のフレーク技術でリサイクルされたペットボトルは、再生品でありながらバージン同等の汎用性があり、衣服だけでなく様々な実用品として使われています。
弊社のペットボトルリサイクルの流れは下記の通りです。
- 破袋機でペットボトルを解体し、選別ラインへ流す
- 一次選別ラインでペットボトル以外のものを除去
- ラベル剥離機でペットボトルに付着したラベルを除去
- トロンメルでキャップやごみを除去
- 光学式自動選別機でラベルが付着しているものを分別
- 二次選別ラインで人の目によって最終チェック
- 金属検出器にかけ金属を除去
- 粉砕洗浄機で洗いながらフレーク状に解体
- 水槽式比重選別機にてキャップとフレークを分離
- 脱水・乾燥機にてフレークを乾燥させる
- フレークが繊維原料として出荷される
弊社では、ラベルやキャップが付いたままでもフレーク状に加工することが可能です。
弊社のフレーク加工に興味がある方は下記のボタンからお問い合わせください。
また、ペットボトルのリサイクルにご興味ある方は下記のバーナーをクリックし、詳しい情報をご覧ください。
リターナブルペットボトルが普及しない訳
リターナブルペットボトルが普及しない理由は以下の2つが考えられます。
- Flavor Carry-over
- Off-Flavor
そもそも、リターナブルペットボトルとは、使用済みペットボトルを洗浄し、そのまま新しいペットボトルとして再利用することを目的としたペットボトルです。
皆様もご存じの「3R」(リデュース、リユース、リサイクル)のうち、「リユース」の代表と言えば「ビン」です。
空きビンは、酒屋や回収業者を通じて再利用されているため、同様にペットボトルもリユースできないか?と考えたのは環境問題に厳しいドイツや北欧諸国でした。
ボトルtoボトルリサイクルのように一度分解する必要がないため、環境負荷は少ない再利用方法です。
リターナブルペットボトルは、海外では多くの国で導入されているものの、日本ではほとんど普及していません。
ここからはその理由を詳しく解説します。
①Flavor Carry-over
回収したペットボトルに以前に充填した商品と異なる商品を充填した場合、以前の商品の香気がボトル内壁に吸着されていて、洗っても除去しきれず、次の商品へ溶け出して「異臭」となってしまうこと。
②Off-Flavor
例えば、飲み残しがあった場合にカビが繁殖し、カビ臭がボトル内壁に吸着されていて、洗っても除去しきれず、次の商品へ溶け出して「異臭」となってしまうこと。
これらの苦情が報告され、リターナブルペットボトルの普及が進んでいません。
日本でも、リターナブルペットボトルについて「ペットボトルリサイクル推進協議会」が2010年12月に検討を行っていますが、下記の理由(一部抜粋)により一部のトライアル品を除き、リターナブルPETボトルは導入されていません。
リターナブルPETボトルの健康・安全性に関しては、アメリカILSI(国際生命科学研究機構)の調査、TNO(オランダ食品衛生研究所)が1994年に発表した「PETリフィーラブルボトルの健康・安全調査」の報告によると、パラチオン、エチレングリコール、ガソリン、エンジンオイル、メタノール、キシレン等の化学物質は、アルカリ洗浄を行っても除去しきれず、PETボトル内壁の内部に残留し、内容液に溶出し、この最大溶出量を人間が摂取した場合、WHO(世界保健機構)の安全基準を超える化学物質が62モデル物質中12物質もあると報告されている。
ガラスビンは、そもそも化学物質を吸着することはなく、アルカリ洗浄すれば完全に除去される。しかし、PETボトルは化学物質と接触すると、その物質を吸着し、アルカリ洗浄しても完全に除去することはできない。
リサイクル業者(再生繊維化)から見たペットボトル
リターナブルが難しいことを除いて、ほぼ完璧とも言えるペットボトルですが、私共ペットボトルをリサイクルする立場の側からは、まだまだ改善すべき点が沢山あるのです。
このブログをご覧の関係者の皆様、私共リサイクル現場の声を反映させて頂ければ、廃棄が少なく、より効率の良いリサイクルが可能かと思います。
①着色されたペットボトルの禁止
ご家庭やオフィスで普及している「水サーバー」のタンク、海外から輸入のペットボトルの一部(マッコリ、ボルビック等)、ワイン用のペットボトルの一部には、ペットボトル本体に着色されているものがあります。
これら着色されたものが混じってしまうと、繊維として着色する際に同じ発色ができずに商品価値がなくなってしまいます。
ペットボトル本体は必ず無色透明で、ラベルによって内容物を保護したもの以外は流通しないように国内外の規制をお願いします。
②生分解性プラスチック使用のペットボトルの禁止
環境に優しいとの触れ込みで植物由来の生分解性プラスチックを使用したペットボトルが増えてきましたが、自然界で分解されるのは何年もかかる上、具体的な被害報告は未だないものの繊維にした際に切れやすくなる可能性が指摘されています。
語感に惑わされず、ペットボトルを使うのであれば徹底的にリサイクルがなされるよう余分な混ざりものを使用しないで頂きたいというのが本音です。
③4ℓ焼酎系ペットボトルのラベル
4ℓ焼酎系ペットボトルのラベルのほとんどは「紙のシール」が貼られています。シールはラベル剥離機では除去できず、リサイクルができません。
大きな容積のペットボトルにフィルムラベルを施すことによるコストアップ等の理由があるのかも知れませんが、リサイクルのこと を考えて是非ともフィルムラベルにして剥がしやすくしてください。
④キャップ、ラベル素材の統一化
プラスチックのリサイクルの肝は「同一素材」です。例えば、ポリプロピレンとポリエチレンが混ざってしまうと高度(バージン樹脂に近いと汎用性や製造効率が上がる)なリサイクルができません。
これもコストを考えてのことだとは思いますが、ポリプロピレン又はポリエチレンのどちらかに統一して頂けると。キャップやラベルのリサイクル率・有効率が上がり、様々な好影響が出てくるのです。
最近では、家庭用ボトルと称してはじからラベルレスの商品も登場しました。
また、ペットボトル自体にメーカーロゴなどを成型するものも登場していますね。
まとめ
普段私たちの身近にあるプラスチックのペットボトルは流通も多く、リサイクル優等生です。
ペットボトルは正しくリサイクルすれば環境への負荷が少ない、非常に優れた物質です。
最近では、ペットボトルからリサイクルされた衣料品などが環境負荷製品として生まれ変わって店頭に並んでいます。
SDGsの観点からも、ペットボトルを正しくリサイクルして再生可能な資源として再利用することは重要です。
弊社では、ペットボトルのラベルとキャップを最新の設備によって分離し、完全フレーク化を行い、その100%を国内の化学繊維メーカーに販売しています。
弊社のフレーク技術でリサイクルされたペットボトルは、再生品でありながらバージン同等の汎用性があり、衣服だけでなく様々な実用品として使われています。
弊社のフレーク加工に興味がある方は下記のボタンからお問い合わせください。
また、ペットボトルのリサイクルにご興味ある方は下記のバーナーをクリックし、詳しい情報をご覧ください。
監修
利根川 靖
株式会社利根川産業の二代目経営者。業界歴20年で東京都廃棄物の組合理事も兼任。
廃棄物業界を盛り上げようと地方の業者と連携。得意分野はITツールにて生産性を高めること。
これからの若い人材が業界で働きたくなる魅力づくりに奮闘中。