このブログを読むことで、「事業系廃棄物」の押さえるべき基本「排出事業者責任」について学ぶことができます。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第3条第1項において、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」とされており、また、同法第11条第1項において、「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない」とされています。
排出事業者責任
廃棄物処理業者に産業廃棄物の処理を委託した場合であっても、排出事業者に処理責任があることに変わりはありません。
廃棄物処理法第12条第7項では、「事業者は、産業廃棄物の最終処分が終了するまでの一連の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない」とされています。
不適正な処理を行う廃棄物処理業者に委託していたことが明らかになれば、排出事業者も廃棄物処理法の措置命令の対象なる可能性があるとともに、社名が公表され、コンプライアンスを充分に果たしていない業者として社会的な評価を落としかねないリスクを充分に認識する必要があります。
つまり、廃棄物の処理義務・処理責任は排出事業者にあって、その処理を業者に委託したとしても、適正に処理されなければ排出事業者の責任は付いて回るということです。ここでいう「責任」とは、廃棄物処理法や各種環境法令、刑法等の実刑や罰金の支払いだけでなく、後述の不法投棄の撤去や処理に関わる費用の負担も含まれます。
また、それら行政措置だけでなく、実名報道等をされることによって社会的な企業イメージの悪化による経営の危機に追い込まれることもあり得ることを認識しましょう。
不法投棄の状況(環境省ホームページより抜粋)
不法投棄の新規判明件数は、ピーク時の平成10年代前半に比べて(平成10年度は1,197件/約120万トン)、大幅に減少しており、防止対策や企業の社会的責任の意識向上により、一定の成果が見られる一方で、平成30年度で未だに年間155件、総量15.7万トン(5,000トン以上の大規模事案4件、計13.1万トン含む。)もの悪質な不法投棄が新規に発覚し、跡を絶たない状況にあります。
不適正処理についても、平成30年度で年間148件、総量5.2万トン(5,000トン以上の大規模事案2件、計1.3万トン含む。)が新規に発覚しており、未だに撲滅するには至っていません。
また、平成30年度末における不法投棄等の残存事案は2,656件報告され、残存事案に対する都道府県等の対応としては、現に支障が生じている13件については、支障除去措置を実施又は実施予定であり、現に支障のおそれがある90件については、支障等の状況により何らかの措置を実施また、実施予定になっています。
不法投棄・不適正処理の事例
(1)豊島事件
香川県にある瀬戸内海の豊島(てしま)に産業廃棄物が大量に不法投棄された事件。当時は「国内最大規模の不法投棄事件」として有名になりました。同島にあった産業廃棄物処理業者が、1975年後半から1990年にかけて許可を受けていないシュレッダーダストや廃油、汚泥等の産業廃棄物を搬入し、敷地内で野焼き等を行い、それらを埋めていたという事件。およそ、92万トンの廃棄物の処理は現在も行われており、土壌汚染や水質汚染も深刻な問題となりました。また、それらの処理費等は膨大で、一説のよると約770億円とも言われています。
(2)青森・岩手県境不法投棄事件
1990年代後半頃から青森県の産業廃棄物処理業者が、自らの私有地である青森・岩手県境の原野に産業廃棄物を不法投棄していた事件。青森県側だけでも前述の「豊島事件」を超える、およそ115万トンの廃棄物があったといわれ、現在も原状回復作業が続けられています。この事件の注目すべき点は、不法投棄された廃棄物の9割近くが首都圏からのものであり、判明しただけでも排出事業者は12,000社にも及んでいます。都会の産業廃棄物が地方の山中に不法投棄されている典型的な事例です。
(3)食品廃棄物不正転売事件
平成28年1月に愛知県の産業廃棄物処理業者が、大手有名外食チェーンの食品廃棄物を処理せず、不正に転売していたことが発覚した事件。土壌汚染や水質汚染といった大きな環境問題にはなりませんでしたが、有名外食チェーンが関連し、食の安全性が脅かされた事件として連日、テレビの報道番組でも取り上げられました。被害にあった大手外食チェーンには概ね同情的な報道が多かったものの、一部では「排出事業者責任はどうなっているのか。」という批判があったことも事実です。
排出事業者が確認すべきこと
廃棄物処理法でいくら「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」とされていても、実際にご自分で処理をできる方は殆どいらっしゃらないと思います。必然的に廃棄物は処理業者に委託することとなりますが、委託してもその処理業者が不適正処理を行えば、責任は排出事業者にも及んできます。そういうことにならないように、信頼できる廃棄物処理業者を見極める上で重要なポイントをご紹介します。
具体的な罰則についてはこちら▼ 「これだけは押さえるべき「廃棄物処理法」の基本について」をご覧ください。
排出事業者責任:思わぬ落とし穴の事例 その1
排出事業者責任:思わぬ落とし穴の事例 その2
排出事業者責任:思わぬ落とし穴の事例 その3
事業活動に伴い必ず発生する事業系廃棄物(一般廃棄物及び産業廃棄物)ですが、自社の社会的責任も問われてしまいますのでお取引なさる廃棄物業者さんは「値段」だけではないいろいろな点を比較しご検討なさることをおすすめします。
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