これだけは押さえるべき産業廃棄物の基本について
このブログを読むことで廃棄物の種類である「産業廃棄物」について深く理解することができます。
廃棄物は「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分かれます。一般廃棄物についてはこちらの記事をご覧ください。
産業廃棄物とは
法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律:俗称「廃掃法」)では、「この法律において「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。」(第2条第2項)と記されています。
産業廃棄物一覧表(法第2条第4項、政令第2条)
あらゆる事業活動に伴うもの
No | 種類 | 具体例 |
1 | 燃え殻 | 石灰がら、焼却炉の残灰、炉清掃残さ物、その他焼却かす |
2 | 汚泥 | 排水処理後及び各種製造業生産工程で排出された泥状物、活性汚泥法による余剰汚泥、ビルピット汚泥(し尿を含むものを除く。)、カーバイドかす、ベントナイト汚泥、洗車場汚泥など |
3 | 廃油 | 鉱物性油、動植物性油、潤滑油、絶縁油、洗浄用油、切削油、溶剤、タールピッチなど |
4 | 廃酸 | 写真定着廃液、廃硫酸、廃塩酸、各種の有機廃酸類など、全ての酸性廃液 |
5 | 廃アルカリ | 写真現像廃液、廃ソーダ液、金属せっけん液など、全てのアルカリ性廃液 |
6 | 廃プラスチック類 | 合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくず(廃タイヤを含む。)など、固形状・液状の全ての合成高分子系化合物 |
7 | ゴムくず | 天然ゴムくず |
8 | 金属くず | ハンダかす、鉄鋼、非鉄金属の研磨くず、切削くずなど |
9 | ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず | ガラスくず(板ガラス等)、耐火レンガくず、タイル・陶磁器くずなど、石膏ボード、コンクリート製品の製造工程からのコンクリートくず |
10 | 鉱さい | 高炉・平炉・電気炉等溶解炉かす、鋳物廃砂、ボタ、不良石灰、粉炭かすなど |
11 | がれき類 | 工作物の除去に伴って生ずるコンクリートの破片、レンガの破片、アスファルトコンクリート製品、その他これに類する不要物 |
12 | ばいじん | 大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設又は産業廃棄物の焼却施設において発生するばいじんであって、集じん施設によって集められたも |
特定の事業活動に伴うもの
13 | 紙くず |
①建設業に係るもの(工作物の新築、改装又は除去に伴って生じたものに限る。) |
14 | 木くず |
①建設業に係るもの(工作物の新築、改装又は除去に伴って生じたものに限る。) |
15 |
繊維くず(天然繊維くずのみ) |
①建設業に係るもの(工作物の新築、改装又は除去に伴って生じたものに限る。) |
16 | 動植物性残さ | 食料品製造業、飲料・たばこ・飼料製造業(たばこ製造業を除く。)、医薬品製造業、香料製造業において原料とした動・植物に係る固形状の不要物で、あめかす、のりかす、醸造かす、発酵かす、魚・獣のあらなどを含む。 |
17 | 動物系固形不要物 | と畜場でとさつ又は解体した獣畜及び食鳥処理場で食鳥処理した食鳥の係る固形状不要物 |
18 | 動物のふん尿 | 畜産農業から排出される牛・馬・豚・めん羊・にわとりなどのふん尿 |
19 | 動物の死体 | 畜産農業から排出される牛・馬・豚・めん羊・にわとりなどの死体 |
20 | 以上の産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないもの |
大きく分けて「あらゆる事業活動に伴うもの」と「特定の事業活動に伴うもの」の2種類があり、同じ廃棄物であっても排出事業者の業種によって一般廃棄物或いは産業廃棄物に区別されます。
別記の「知らないと損している、事業系一般廃棄物についてのまとめ」にも同様の事例を掲載しましたが、同じ廃棄物であっても業種によって処理方法が異なっているのです。この辺りの件は追々掘り下げて参りますので、今回は基本的な部分からご紹介致します。
廃プラスチック類とは
「あらゆる事業活動に伴うもの」に該当する「廃プラスチック類」の定義は「全ての合成高分子系化合物」とされています。
何やら難しそうな名称ですが、要するに「石油から作られた物」のことで、ビニール袋やクリアファイル等の軟質系の物から、新型コロナウィルスの感染防止対策で一躍脚光を浴びているアクリル板やゴルフボールといった硬質な物まで様々な形状で、我々の生活に無くてはならない素材の一つです。
プラスチックの特徴としては、加工が容易で耐久性があることですが「マイクロプラスチック」等でもご存じの通り、自然界では分解され難く、地球温暖化とともに環境問題の最右翼として論じられています。
やや話が逸れますが、先進国で今頃になって騒がれ始めているプラスチック問題ですが、アフリカ大陸の多くの国では「ビニール袋の使用禁止」が法律によって決められているのです。
これは、捨てられたビニール袋を野生動物が食べて死んでしまうことを防止しようという対策です。
野生動物の保護目的は勿論のことですが、アフリカ大陸の多くの国は野生動物を観光資源としており、それらの資源を守るためでもあるのです。
外国からの観光客にも適用され、ビニール袋の国内への持ち込みや使用が禁止され、空港等の入国検査で厳しくチェックされるとともに、違反者には重い罰金が科せられるのです。
廃プラスチック類のリサイクル
前項でも述べましたが、石油から作られるプラスチック類は熱を加えることで様々な形状に加工できるだけでなく、耐久性もあるため、我々の生活に無くてはならない素材です。現代社会は、プラスチックなしでは成立しないと言っても過言ではありません。問題は、このプラスチックが捨てられてしまうと自然界では容易に分解されず動物や魚類に直接的な危険を与えるだけでなく、一部の学者からは生物の体内に蓄積されることで健康に悪影響を及ぼす「環境ホルモン」が検出されているといった目に見えない危険性も報告されています。また、石油は「限りある資源」であり、過去の掘削技術では利用することが不可能だった「シェールオイル」を得られるようになってからは、多少の猶予は生まれたものの、「近い将来には枯渇する。」と言われています。我々は、この使用されたプラスチックを有効にリサイクルすることで、地球環境の保全を行っていかなければなりません。
(1)リサイクルの状況
環境省によると、2017年度に日本国内で排出された「産業廃棄物」は、4億トン弱。
内訳は、汚泥44.5%。動物のふん尿20.3%、がれき類15.6%・・・、廃プラスチック類1.7%となっています。
少ないとお感じでしょうが、全体の1.7%とはいえ約650万トンの産業廃棄物系の廃プラスチック類が捨てられているとともに、ビニール袋等の一般系廃プラスチック類を合わせると年間903万トンの廃プラスチック類が捨てられており、国民1人あたり年間約75㎏を捨てている計算になるのです。
(2)廃プラスチック類の主なリサイクルの種類
廃プラスチック類のリサイクル方法には、主に下記の3つがあります。
(3)「リサイクル」優先順位の最後?
皆さんの「3R」という言葉をお聞きになったことがあるでしょう。
「Reduce」(リデュース)、「Reuse」(リユース)、「Recycle」(リサイクル)の3つの「R」の総称です。
廃棄物とはごみということ。
廃棄物を出さないこと「Reduce」(リデュース)が1番、使い終わった物をそのまま再利用「Reuse」(リユース)するのが2番、どうしても廃棄するのであれば「Recycle」(リサイクル)をするという流れになります。
皆さんも、「リサイクルされるから捨ててもいいんだ。」と思わずに、そもそも廃棄物を出さない生活(無駄な物は買わない、過剰包装の物は買わない等々)をしてみては如何でしょうか。
弊社のリサイクル「廃プラスチック類」編(詳細は弊社HPをご覧下さい)
弊社では、廃プラスチック類のリサイクルとして主に3つの方法で行っています。
(1)PETボトル(マテリアルリサイクル)
PET(ポリエチレンテレフタレート)から作られているから「PETボトル」。透明性、耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れているとともに強靭なPET樹脂は、PETボトル以外にも食品容器や絶縁材料、各種フィルム等に広く使用されています。
弊社ではPETボトルを受入れ、ラベルを除去(別途リサイクル)し、本体とキャップを洗浄しながら破砕します。(フレーク処理)破砕されたキャップと本体は比重分離してそれぞれフレコンバッグに詰め、次の工程であるペレット工場へ運搬します。(ペレット化:粒化処理)キャップは、汎用のプラスチック樹脂として、本体は国内大手繊維メーカーで糸に加工され、誰もがご存知の有名ブランドの服に生まれ変わっています。
(2)発泡スチロール・トレイ(マテリアルリサイクル)
PS(ポリスチレン)の粒を発泡させたから「発泡スチロール」。弊社では、魚箱・野菜箱系の発泡スチロールと家電製品等の緩衝材の発泡スチロールをそれぞれの方法でリサイクルしています。
魚箱・野菜箱系
縛ってあるビニール紐、ガムテープ、シールを除去(別途リサイクル)し、破砕後に「溶融処理」をします。(ペレット化:粒化処理)様々な用途がありますが、弊社では主に「住宅用防音断熱材」になっています。
緩衝材系
破砕後に「圧縮固化」をします。(インゴット化:延板化処理)こちらは、インゴットで出荷後に専門業者でペレット化し、汎用PS原材料になって、OA機器等に再利用されます。
(3)その他の廃プラスチック類(サーマルリサイクル)
PP、PE、PS、PET・・・、様々な種類のプラスチックは単一素材であれば容易にリサイクルが可能ですが、混ざっているとリサイクルは困難になります。前述のPETボトルや発泡スチロールは、それぞれ単一素材でマテリアルリサイクルが可能でしたが混ざっている場合はサーマルリサイクルで対応しなければなりません。
弊社では、混ざった廃プラスチック類をRPF(Refuse derived paper and plastics densified Fuelの略)化しています。RPFは、主に産業廃棄物ののうち、マテリアルリサイクルが困難な古紙や廃プラスチック類を主原料とした固形燃料のことで、前述のPETボトルのラベル、ビニール紐、ガムテープ、シール等を使用して製造しており、重油や石炭の代替燃料として使用され、それらに比べて約30%のCo2削減に貢献しています。
監修
利根川 靖
株式会社利根川産業の二代目経営者。業界歴20年で東京都廃棄物の組合理事も兼任。
廃棄物業界を盛り上げようと地方の業者と連携。得意分野はITツールにて生産性を高めること。
これからの若い人材が業界で働きたくなる魅力づくりに奮闘中。